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yamamori

「立ち入り禁止」の立て札を気にせず、山へと入っていく者がいた。誰かに追われているのか、そわそわしながら奥へ奥へと進んでいく。石塚を通り過ぎ、烏の鳴き声を聞き、枯れ木を見ても歩き続け、もはや無意識のうちに足が前に出るようになった。日が陰り、くたくたになって、その日は野宿かと覚悟した頃、ぱぁっと開けたところに出て、一軒の小屋を見つけた。これは天の助けと小屋に入ると、歩き続けた疲れだろうか、すぐに寝てしまった。

翌朝、目が覚めて、小屋を見回してみると、高そうなテレビを始め、食料の詰まった冷蔵庫、最新の雑誌のそろった本棚など便利に整っている。ここまで来れば誰にも見つからないだろう、と確信して、本棚からグルメ雑誌を取り出し読みふけっているうちに一日は、過ぎた。

のんびりとテレビを見ていて、電気が、電波がどこから来ているのか、との疑問がわいた。小屋を出て、あたりを調べてみるが何もこれといったものはない。それどころか、小屋の周りは開けているが、それだけで、道らしいものがない。

1週間ほどたって、気がつくと、来たときと本棚の内容が変わっている。変わっていない本もあるが、一部の目立つ本は最新の物に取り替えられていた。冷蔵庫からも、食料をとっているので、中身は減るはずだか、気づくと元に戻っている。

ここに最後までいるか。道無き山森に踏み込むか。

解説

闇が語った物語シリーズ、第一弾です。オリジナルは2002年1月26日夜の作となっており、ファイルスタンプは2002年1月28日1:01:16となっていました。

途中まではいかにもショートショート、といった感じです。「石塚を通り過ぎ」とあることから、この小屋は魔の小屋なのでしょう。男が翌朝まず「グルメ雑誌」をとったのはお腹がすいていたからかな。「変わっていない本」は季刊誌か月刊誌で、「一部の目立つ本」は週刊誌なのでしょう。

ここまではよいとして、最後いきなり唐突に終わっているのがよくわかりません。おそらく「最後」は「最期」のことだと思うのですけれど。

「闇が語った物語」という名前は、星新一の「ささやかれた物語」にちなんだものでしょう。他にも名前の付けようがあったのではないかと、今では思うのですが、このテキストの行頭で、この名前で、シリーズ扱いにしていたため、そのまま使うことにします。

2003年08月18日午後10時、改定第一版

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